StarCityGamesより。
マジックのプレイスキルについてのRaphael Levyの記事。

2年前の記事なのですがなぜか先日Googleリーダーに上がってきて、とても面白かったので翻訳。


-----
The Pro Perspective - Sharpening Your Skills
By Raphael Levy
05/13/2010

http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/19325_The_Pro_Perspective_Sharpening_Your_Skills.html

はじめに

こんな言い習わしがある・・・

「プレイすればするほど、上手くなる。」

これは、どんなプレイをしようが上手くなる、というニュアンスだ。プレイし続けている限り上達し続ける。

私はこれには同意できない。

私は、以前書いた記事"Reflex versus Automatism"からこのことについて考え始めた。
多くの人は、トーナメントでの試合になると練習試合でやったことのあるプレイを繰り返す傾向があると記事で述べた。残念なことに、あなたがこれまでのゲームでやってきたプレイが、あらゆるゲームにおいて正しいプレイだと教えてくれる魔法の呪文はない。
もちろん、あるプレイがベターであることに気づけるのは他でもない練習期間だ。しかしプレイを最適化するには、「ベストな」プレイを見つけ出す必要がある。

より多くのゲームを行い、より多くのことを試せば、ある状況でのベストなプレイを見つけられる可能性がある。もしとんでもなく時間があってあらゆる組み合わせを試す練習ができるなら、これはうまくいくだろう。実際にはだれもそんな時間は持ち合わせていない。
しかし再び言うと、ハイレベルなマジックのプレイというのは既に見たことのあるプレイを繰り返すことではない。正確な反射神経によって対応すること、そしてあなたの頭脳に前もって用意しておいたツールを使って正解を見つけることだ。

私は人にマジックについて話すとき、ポーカーとチェスをミックスしたものだと言う。
たいてい私が何を言わんとしているかは理解してもらえないが、以下の話を読んでもらえば非常にクリアになるはずだ。

マジックはチェスのような戦略ゲームで、あなたは頭脳とリソースを使って勝利を目指す。
思考の方法は異なり(当然だが)、起きていることが全て分かるチェスとは違ってマジックでは相手が手札に何を持っているか、彼が何をドローするか、自分がこれから何をドローするかは分からない。
ゲーム内の非公開情報はポーカーにはあり、チェスにはない。知られざる情報を発見し、活用することがポーカーの全てだ。

私がマジックをこのように説明する理由は、マジックのスキルはどこから手に入れるのか、また、より優れたマジックプレイヤーになるためにスキルを高めるには何をすればよいのかを理解してもらうためだ。
あなたはチェスプレイヤーとポーカープレイヤーのスキルを極める必要がある。


1- チェスプレイヤーのスキル

「優れたチェスプレイヤーは序盤の定石とゲーム中の状況を認識し、それにしたがいプレイする。」

良いチェスプレイヤーは決まりきった自動操縦のプレイを続ければ相手の罠に嵌まることを知っている。そして、いつギアチェンジをすべきかを知っている。

彼は可能な限り早期に導き出したゲームプランを持っており、それが失敗した場合の代替手段も知っている。

例としてハイレベルなチェスの試合を取り上げよう。
最初の10手かそこらは両プレイヤーにとって完全に自動操縦になる。どちらのプレイヤーも、あり得る序盤の定石は全て何度も何度も見たことがある。しかし、いったんどちらかのプレイヤーがクラシックな定石にない、あるいは本に載っていない手を指したとき、彼らの技術が機能し始める。
二人はそれ以降の全ての手について論理的に答えを導き出す必要がある。そして、あり得る全てのシナリオを考慮することはできない。数が多すぎるためだ。たとえその能力があっても、対局時計がそれをしている時間はないことを告げる。
そう、彼らは高速に考える方法を見つける必要がある。

そして・・・あなたはスタンダードの白ウィニーを、青白コントロールデッキ(Wrath of God、ドロースペル、終盤のコントロール、そしてフィニッシャー入り)を相手に使っている。

はじめの2ターンは教科書通りの進行になるだろう。あなたは最も速いアタッカーを出し、対戦相手はマナを伸ばし、ドローしたりあなたの脅威をいくつかカウンターしたりして終盤に備える。

4ターン目になり、Wrath of Godが使える4マナに相手が到達した瞬間、これがあなたがギアチェンジするタイミングだ。
あなたはさらにクリーチャーを召喚してボード上のプレッシャーを強めるべきだろうか?クリーチャーは手札に持っておき、来たる全体除去によって壊滅するのを避けるべきだろうか?

この問いに決定的な答えはない。クリーチャーをプレイし、全てラスで流されて負けるかもしれないし、手札に持っておくことで対戦相手に時間を与えてしまい、彼の長期的なプランの前に結局敗れるかもしれない。

この状況に可能な限り最善の方法で答えるには、それまでに得た情報を使う必要がある。それまでに対戦相手がとった全ての行動が手がかりになる。
例えば・・・彼があなたの2体目の脅威をRemove Soulでカウンターした理由を考えてみよう。これは彼がWrath of Godを持っていないことを意味しているかもしれない。それとも彼はラスを持っており、単に時間を稼ぐためだったかもしれないし、あるいはあなたに全展開させて流すために、ラスを持っていないフリでもしているのかもしれない。
情報によって、あなたは最善手をプレイできるようになるはずだ。それまでの相手の全行動があなたの頭脳を始動させるトリガーとなり、状況を分析する助けとなる。

対戦相手が片方のナイトの駒を動かしている、これによりあなたの駒のいくつかが直接/間接的に攻撃されるだろう。今やこのナイトは新たな8つのマスを守っている。たった一手の動きがトリガーとなってこれらのことがあなたの頭に想起される。
(あなたが訓練を積んだチェスプレイヤーなら)これらのことは一瞬で思い浮かべることができる。次に考えるべきことは、相手が何を企んでいるのか、それに対する正しい回答は何か、あなたの戦線をどうやって維持するかだ。

そしてこれはまさにマジックプレイヤーが身に付けているべきスキルの一つだ。
状況を認識し、それが何を示しているかを理解し、それにしたがって対応する。
こんなことをあえて言うのは滑稽に聞こえるかもしれない。しかし、多くの場合2番目のステップが飛ばされる。
状況を認識し、正しいと思った行動をする、というように。それが何を示しているかを理解することなく、正しいと思ったことにしたがって。

「彼はナイトを動かしビショップの守りが外れた。よし、ビショップを攻撃しよう。」
現実には対戦相手は危険なプランを思い描いており、あなたはただ罠に飛び込むだけになる。

あなたは対戦相手がとった全ての手をトリガーとして頭を働かせ、状況をじっくり考える助けとする必要がある。このトリガー(頭の始動スイッチ)は自然に得られるものではないし、自分自身だけで鍛えることも難しい。
この得難いスキルを鍛え自分のものにする最も良い方法は、他人のプレイを見ることだ。
あなたのレベルによらず、他人のプレイを見るのはとても面白いものだ。
もしあまり良くないプレイヤーを見ているなら、彼の立場で考えてみよう。彼の立場だったら何をするだろう、と考えよう。
彼がミスをしたら、それがどこからきたものか推測するんだ。見逃しがあった?状況の分析が良くなかった?これはあなたの頭の始動スイッチがどのように働くかを理解する助けになるだろう。
そうしたら今度は、プロのプレイをチェックしてみよう。全てのプロのゲームが完璧だとは言えないが、彼らのゲームからはより多くのことを学べる可能性が高い。
良くないプレイヤーを見ているときにやったのとまったく同じことをしよう。今回の場合、あなたは劣った手を思い浮かべる可能性が高い。
考えたこともなかったような手を見て驚くことがときどきあるだろう。これがまさに埋めるべきギャップだ。あなたがその手について考えなかったのはなぜだろう?プロは何を考えてその手をとったのだろう?何が彼らの頭のトリガーとなったのかを理解し、それを自分のものにしようとしてみよう。あなたが見ておらず、彼が見ていたものはなんだろう?

これは複雑だが、あなたが良いゲームをしたいと思うならキーとなる考え方だ。
プロはあなたが理解していない何かを理解しているプレイヤーだ。それが何なのかを見つけようとしてほしい。
一緒にプレイした人たちと議論するのをためらわないでほしい。彼らは素晴らしい助けになるだろう。


2- ポーカープレイヤーのスキル

「ポーカープレイヤーたちはゲームを暗記する。彼らは自分の勝つ確率を知り、それにしたがいプレイする。」

ポーカープレイヤーは対戦相手を読み、非公開情報を活用する。

ポーカーではブラフをして、「相手を読む」ことは誰でも知っている。マジックでは、これらのスキルは完全に役に立たないわけではないが、使うことはかなり難しい(特にMOでは)。
全てのプロポーカープレイヤーが持っているメインスキルはリスクを考える能力だ。
リスクを考えることについて、その裏にある科学的な意味について話そうと思う。
例えば、次のような文を取り上げよう:「もし私がコールしたら、私がフラッシュをヒットしてポットを得る確率が25%ある。」
マジックで言えば次の文と同じだ:「もし私がこれをプレイしたら、私が土地を引いてすぐにゲームに勝つ確率が45%ある。」
これはとても単純な例だが、あなたはほとんどのゲームでこれと同じような勝率計算に直面しているだろう。・・・そしてときどき解くのが非常に難しい式に出会うこともあるだろう。

あなたのとる手の多くで、あなたはリスクを引き受けている。手のリスクは、それがミスであることだ。
まったくリスクがないこともときどきある。この場合、あなたは優れたプレイヤーである必要はない。
手がミスになる可能性があるとき、リスクを評価する必要がある。
次のようには簡単に考えられるだろう:「この手がミスである確率は50%ある、つまり相手が回答を持っているか持っていないかだ。」
こう考えてしまうと、あなたは自分のとる手をまるごと「母なる自然」つまり「運」に委ねてしまうことになる。
おそらく現実にはより正確に計算する方法がたくさんある。あなたは得られた全てのデータを1つの巨大な式、最善手を打つために解く必要のある式に放り込む。
「このターン、彼はチップを追加で賭けなかった。彼が罠をしかけている確率はどれぐらいあるか?」
これは次のようにうまく言い換えられる:「彼は2枚のカードを持っており、置ければ恩恵を得られるはずの土地をこのターン出さなかった・・・彼が1枚の対抗呪文や除去を持っている確率はどれぐらいあるか?2枚持っている確率は?あるいはただプレイできないカード2枚を持っている確率は?」

これらの問いに最も正確な答えを出すには、使える情報をできるだけたくさん集める必要がある。つまり、フォーマットを知り、対戦相手がデッキに入れているであろうカードを知る必要がある(基本的には家でやっておくことだ)。
彼のそれまでのプレイにあなたの知識を関連づけて、彼が持っているものを推測しなければならない。チェスのスキルを使っているときと同様、対戦相手がとった全ての行動をトリガーに頭を始動させ、彼が潜在的に持っている可能性のあるカードを考える。
対戦相手をよく見て読みのスキルを使ったり、より多くの情報を引き出すために相手に話しかけたりすることもできるが、このやり方で得た情報はそれほど信じられない。自分の推論スキルの方を信じよう。

いったん全ての情報を集めたら、あなたは式を解き始められる。ときには煮詰まって「もし彼がアレを持っていたら、どうやろうが死ぬ」となり、あながち悪いとは言えない当初のプラン(「オールイン」して祈ったり・・・)を進めなければならなくなる。(※訳注:「オールイン」はポーカー用語で手持ちのチップ全てを賭けるプレイ。)
しかし重要な問題こそ、正しく解く必要がある。

勝つ確率を徹底的に考える必要のある一番ありふれたシチュエーションはリミテッドのゲーム中、ダメージレースの最中だ。
クリーチャーのうち1体を次のターンの防御用に残すべきか否か、もしくはオールアタックすべきかまったく殴らないべきかをあなたは知らない。もう1体追加でアタックすることによって引き受けるリスクはどの程度あるだろう?簡単に言えば、それはゲームに敗北するリスクかもしれない。
ただ1体だけを殴らず残した場合、相手はそれを処理して殴り殺しにくる。そのクリーチャーで追加のダメージを与えることがゲームの結果にどの程度影響を与えるだろう?そのクリーチャーでアタックしなかった場合、あるいは1体も殴らず膠着させた場合に、相手が決定的なアドバンテージを築く手段を引きこむためのドローを何枚与えることになるだろう?
これは簡単な計算ではまったくない。与えるダメージ量次第で計算結果は変わる。また相手のデッキに入っているカードによっても変わり、その全てを知ることはできないだろう。

これら全ての過程を一つ一つ実行することなく正解にかなり近づくスキルをポーカープレイヤーは持っている。しかし他の多くのことと同じく、正しい答えを得るために何を探せば良いか、には気づく必要がある。
このような状況での考え方が変われば、あなたのプレイは見違えるほど変わるだろう。「彼はアレを持っているか、あるいは持っていないか」と考える代わりに、「こうプレイした場合、どんなリスクを引き受けることになるのか」と考えよう。これは練習すればできるようになる。
もちろん、紙の上に数字を書き出して解こうとすることもできる。これはゲームで自分がどんな位置にいるかを理解するとても良い方法だが、トーナメントのゲームでそれができるかどうかは分からない。


簡潔に言えば、ゲームの状態を理解するためにチェスプレイヤーのスキルを使い、リスクを評価するためにポーカープレイヤーのスキルを使い、それから決断をくだそう。

今後の記事ではより詳しい例や状況に踏み込もうと思う。今回は基本的なところまでだ。
その間、遠慮せずに今回挙げた素材について考えてみてほしい。
あなたのゲームを見る目が少しでも変わりますように。

Raph

コメント

nophoto
Yanth
2012年7月26日7:29

いつも翻訳おつかれー。楽しく読んでるよ。
その中でもこれは非常に面白い!!
ポーカーの件は麻雀を思い出させるね。

LED
2012年7月26日11:50

はじまして。
LEDといいます。

翻訳記事、非常に為になりました。
ありがとうございます。

リンクさせて頂きましたので宜しくお願い致します。

REQUIEM
2012年7月26日17:07

はじめまして。
大変参考になりました。
翻訳をしていただく方々にはいつも頭が下がる思いでおります。
リンクさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。

Radish
2012年7月27日0:48

> Yanth
麻雀もリスクとの闘いだね。
マジック好きには麻雀好きが多いらしいけど、海外ではポーカー好きが多いのかも。

> LEDさん、REQUIEMさん
はじめまして、コメントありがとうございます!訳してよかったです。
自分の楽しみでやっているところもあるので、だらだら続けていければなぁと思っております。
こちらからもリンクさせていただきました。

re-giant
2012年7月28日22:55

>2年前の記事なのですがなぜか先日Googleリーダーに上がってきて、とても面白かった

良い記事って時代を超えて面白いですよね。10年以上前の記事でも面白いものは面白いですし。

Radish
2012年7月29日0:09

> re-giantさん
本当に。知らない良記事がまだまだ眠っているかと思うと過去記事を漁るのも楽しくなってきますね。

ZENO(ゼノ@ 5色の人)
2012年8月1日6:12

とても参考になりました。
非常に良い記事を翻訳してくださり、本当にありがとうございました。

失礼ながらリンクをさせていただきました。よろしくお願いいたします。

Radish
2012年8月1日7:19

> ZENO(ゼノ@ 5色の人)さん
コメントありがとうございます。
レガシーの記事多めですがこういうプレイング記事も見つけたら訳していこうと思っていますので、よろしくお願いします。
こちらからもリンクさせていただきました。

ゆきあ
2012年12月26日11:50

漠然と捉えていたプレイングという言葉をチェスとポーカーに噛み砕かれた事で、とても吸収しやすい記事でした。
自分なりにもう少し咀嚼したいと思います。
リンクさせて頂きます。

Radish
2012年12月26日23:36

> ゆきあさん
物の見え方がちょっと変わる記事って楽しいですよね。
コメントありがとうございます。こちらからもリンクさせていただきました。

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索